グラインダーをはじめとする、物品を切断・研磨するための機械を「研削砥石」と言います。研削加工を行う際の砥石は消耗品のため、使用していると新品に取り替える必要があります。
研削砥石は円盤が高速で回転するため、割れや破断による事故も多く、砥石の取り替えは労働安全衛生法で、『研削といしの取替え等の業務には特別教育が必要である』と定められています。
今回は、そんな『自由研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育』について紹介していきます。
目次
研削用といし取替試運転作業者について
研削用といし取替試運転作業者とは
『研削用といし取替試運転作業者』とは、研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育を修了した者のことを指します。
危険又は有害な業務に労働者を就かせる場合には、労働安全衛生法に基づいて事業者等が教育を行い、作業させる必要があります。研削用といしの取り替えについては労働安全衛生規則第36条の一番初めに記載されていることもあり、危険な作業であるということがうかがえます。
砥石の取り替えと取り替え後の試運転(3分間の空転)は、研削用といし取替試運転作業者が実施する必要があります。
なお、研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育には、『自由研削といし』と『機械研削といし』の2種類があります。
また、本資格について国家資格と区分しましたが、国から認定された団体しかできない講習ではないため、厳密に言えば区分が微妙な資格であると言えます。
自由研削といしとは
自由研削といしとは、研削用の機器のうち、ディスクグラインダー等の円盤状の砥石を用いて研削を行うもので、研削用の機器か被加工物が固定されていないため、使用の際に手を使うのが特徴です。
※ちなみに、砥石の『砥』の字は常用漢字ではないため、法令では『といし』という表記に統一されています。
なぜ自由研削といしは危険なのか
先ほどから、研削といしの取り扱いは“危険“と書いていきましたが、なぜなのでしょうか?
研削用の砥石は“と粒”、“結合剤”、“気孔”の3つの要素からできており、使用の際はこれらが少しずつ壊れていくことで、常に新しいと粒で被加工物を削ることができるため、研削性能を維持したまま加工することができます。砥石に用いられる“と粒”と“結合剤”には、様々な“硬さ”や“じん性”のものがあり、被加工物の材質によって適した砥石を選ぶ必要があります。つまり、砥石は“ある程度壊れること”を前提としているため割れやすく、陶器のようなものであると思ってもらえればいいでしょう。そのようなものを、250km/hで高速回転するような機械に取り付けて使うので、使用方法を誤ると砥石が破損し、その破片が自分や周辺の人に危害を与えてしまうこともあります。
そのため、正しい知識を持った人が、機械に適合した砥石の取り付けを実施し、使用前に安全性をチェックする必要があるんです。
資格の取り方
ここでは、自由研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育の講習について説明していきます。
資格の取得方法
本資格は、特別教育(講習)によって取得することができます。講習の期間は1日(6時間)です。
講習は、コマツやコベルコ等の教習所や東京技能者協会等で実施しています。特別教育は技能講習と異なり、国から指定を受けた実施機関しか実施できないわけではないため講習をやっている場所は多く、自分の空いている日程に合った講習日を予約すれば良いでしょう。
取得にかかる金額
取得にかかる金額は講習を開催する団体によって異なりますが、
講習料:10,000円前後
くらいが相場です。
受講資格
受講資格は18歳以上です。その他の条件はないため、基本的には年齢さえ満たしていれば誰でも受講可能です。
講習科目
講習科目は以下の通り。
学科 | 自由研削用研削盤、自由研削用といし、取付け具等に関する知識 | 2時間 |
自由研削用といしの取付け方法及び試運転の方法に関する知識 | 1時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | 自由研削用といしの取付け方法及び試運転の方法 | 2時間 |
特に試験等は無いので、勉強をする必要はありません。実技も特に難しいことはなく、グラインダーへの砥石の取り付けと試運転、機械の性能(回転数やサイズ)に適応した砥石の性能の計算をする感じでした。
難易度はどれくらい?
本資格は取得が非常に容易な資格で、試験もないため難易度もかなり低いです。受講さえすれば、誰でも取得できる資格と言えるでしょう。
・難易度(0~10段階で10が高い):0
まとめ
自由研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育は、学科講習(一部実技講習あり)のみで修了試験等は無いので、難易度は高くありません。そのため一定レベル以下の職務に合法的に従事できる一作業員としての資格が得られるにとどまっているため、作業主任者になれるわけではありません。実際、受講していても「仕事で必要だから」と、会社に言われて来ている人が多いイメージでした。この資格を持っているからと言って、“手当てが出る”ということもあまりないでしょう。ただし、この資格を持っていないとそもそも仕事に就けない(特別教育が義務付けられている)ため、業種によっては“持っておくのが最低限”という場合もあるでしょう。
今、特にそのような仕事に就いていない人も、自分ができる仕事を増やすという意味では、取得しておいて損はない資格です。これから、どの資格を取ろうか悩んでいる方は是非取ってみてはいかがでしょうか。