社会人になってからも、旅は僕の趣味である。
会社終わりで飛んで、外国へ行く。
そんなこともしょっちゅう。
今回はフィリピンとインドネシアを旅したときのフィリピンでの話。
東南アジアの島国旅
そもそもフィリピンとインドネシアに行こうと思ったのは、日本以外の“島国”に行ってみたかったから。
なんやかんや、日本以外の島国に行くのは初めてで、東南アジアの他の国々となにか違うのか、日本と何が共通しているのかと意識して歩いてはみた。
が、東南アジアの他国とそんな違わず、
ザ・東南アジア!
って感じの雰囲気だった。
まぁ、当たり前と言えば当たり前かもしれない。日本でも、離島ならまだしも本土の街で島国らしさを感じることは無いのだから。
東南アジアの別の国では、レディボーイの方に絡まれたり、追いかけ回されたりされたりしたが、他国とそう違わないのは、レディボーイの方も同じだった。
レディボーイのオネェさんとの出会い
金曜日の夜に日本を出発し、マニラのニノイアキノ国際空港に到着したのは土曜日の早朝だった。
街へすぐに出ても、なにもやることが無いだろうと思い、空港でしばらく寝た。
そんなこともあり、空港を出たのは午前9時半ごろ。
フィリピンでは、アメリカ統治時代の名残で、バスの代わりに『ジプニー』と呼ばれるジープが街中を走っている。
僕は空港の傍に停まっていたジプニーに乗り込み、適当に街へ向かうことにした。
乗ってしばらくすると市街に到着したので、あたりを見回す。空港で最低限の両替しかしていなかったため、両替所に行きたかったからだ。
両替所がポツポツと何軒か見え始めたあたりでジプニーを降りた。
街の両替所は、付近で何軒か店がかたまっている場合が多い。あとは、日本円のレートが最も良い店を探すのだ。
両替を終えたのは午前10時ごろ。
キョロキョロしてたのがいけなかったのか、両替所を出るとすぐに、呼んでもいないのに、どこからともなくレディボーイの方がやってきて、捕まってしまった。
後ろからしか写真が撮れていないが、彼(彼女?)がそう。
もしかしたら、
「悪く無さそうじゃん!」
とか
「これは、絶対美人やろ!」
とか、かなりプラスに考えている人もいるかと思うから、一つ言わせてもらおう。
「全っ然そんなことないから!」
いや、ほんと、そんなことないからね?
前歯のない女装したおっさんだからね?
こんなこと言ってると『差別的だ』とか、『人権が』とか、言われるかもしれないけれど、その辺を歩いている学生たちに、見ただけで爆笑されるくらいの女装の完成度のおじさんに絡まれるのは正直キツい。
日本でもよく、街を歩いていて『関わってはいけない雰囲気』を醸し出しているおじさんを見ることがあるが、今回はそういうおじさんが女装をして街を歩いている感じである。
オネェさんとなぜかデートする事に
出会ってからと言うもの、彼(彼女?)はずっと僕の横を並んで歩いていた。
いや、最初は横を歩いているだけだったが、気がつけば腕を組まれ、がっちりとホールドされていた。
女装しているとはいえ、元は身長約180cmのおじさん。力は相当強く、半ば引きずられるようにして街を歩いた。
彼からは、いかにも”関わるとヤバい”という雰囲気がでていたので、無視を決め込んで歩いているにも関わらず、彼は
「あのホテルは良い」
「あれは五つ星のホテルだ」
と、横でずっと近所のホテルの説明をしていた。
僕は周りから見るとマジメに女装おじさんとデートをしている人だと思われたのだろう。
道行く多くの人々に指を指され笑われた。
また、いかにも『街を歩いていてこの人に関わるとまずい』という雰囲気を醸し出すおばさん2人が、冷やかしの雰囲気丸出しで道を聞いてきたりもした。
ついに精神的に耐えられなくなり、ひっそりとしようとベンチへ座ったのだが、これが良くなかった。
彼がここぞとばかりに、
「私はマッサージ店で働いていたことがある」
と、太ももに触れてくるのだ。
「ちょっと触らないでもらえるかな…」
と、注意をしたが、彼は全く動じない。
それどころか、
「家に来ないか?」
「家でビールを飲もう」
「私には日本にいる妹がいる」
「なぜ、君はスネ毛がたくましいのか?」
などと、話を続けてきたので、
「一人になりたい」
「関わらないでくれ」
「消えてくれ」
「あなたが嫌いだ」
と、感情を素直に伝えた。
すると、
「私の何が嫌いなのか?」
と、言い出す始末だった。
“何が嫌いなのか”というより”何が嫌いじゃないのか”ということすら見つけることができなかったため、
「ごめん、全部」
と、正直に言うと、彼は急に叫びながら泣き出した。
いや、ほんとに大きな叫び声だった。
情緒どしたよ!
次々にやってくる突然の展開に戸惑いながらも、とりあえずその場を去ることに決めた。
人によっては、泣いている人を放置して去るなんてと思うかもしれない。
ただ、まだフィリピンに来てからというもの、僕は両替しかしていない。変なおじさんに構っている時間がもったいないのだ。
変なおじさんの次は変なおばさんたち
公園で泣き叫ぶ彼を撒いて歩いていると、辺りの人々が僕を指さして笑っている。
先ほど、彼と歩いている姿を見ていた人たちだ。
あまりにも笑いものにされたため、心が痛くなり、急いでその場を後にしようとした、次の瞬間、突然大きな声がした。
「Gggggggゲエエエエエエaaaayyyyyィィィィィイ!!!! 」
「He is gay!!!!!!」
………っは!!?
声のする方向を見ると、指をさして叫んでいる人がいた。
先ほど、彼と歩いていたときに冷やかしの雰囲気たっぷりで道を聞いてきたおばさん2人が僕を指さしながら叫んでいた。
「ここにいてはヤバい!」
そう思って、早足でその場を後にしようとしたが、おばさん2人は後から付いてきて言う
「君、ゲイだよね?」
「さっき、彼と話したとき、君のこと恋人だと言っていたぞ」
「これからどこへ向かうつもりだったんだ?」
「もしゲイでないのならば、私たちにランチを奢れ」
はい?
何なんだ…この謎展開は?
全く意味がわからない。それに、もはや色々な事が起こりすぎて食欲などない。
その後も1時間程度、おばさん2人に付きまとわれ、流石に決心した。
全力で走って逃げよう。
「約束が違う!」
「やはりゲイだったのか!」
と、叫ぶおばさん2人を尻目に、走って走りまくった。
そして、ようやく一人になった頃には14時を超えていた。
そんなわけで、その後もフィリピンを旅したが、今となっては他の記憶は薄くなってしまった。
ただ、このエピソードだけは明確に覚えている。
この経験から学んだこと
- 優柔不断は望まぬ結果を生む
- きちんと”怒る”ことのできる日本人になろう
- 明らかに雰囲気のやばい人は避けた方が良い