韓国最大のスラム『九龍村』に行ってみた

皆さんは『スラム』と聞くと何を思い浮かべますか?

“貧困?”、“悪い治安?”、“バラック?”、“ホームレス?”、“ボロボロの服装?”

さまざまなイメージがあるかと思いますが、ひとくくりに“スラム”と言ってもその雰囲気は場所によって様々。

今回は、ソウルにある韓国最大のスラム『九龍村』に行ってきました。

九龍村の場所は?

まず九龍村の場所ですが、江南(カンナム)にあります。江南というと、有名な曲『カンナムスタイル』の名前になっていますが、高級住宅街として有名なエリアですが、実はそんな江南にもスラムがあるんです。

九龍村へのアクセスですが、地下鉄の九龍駅から徒歩でおよそ15分とのこと。

ちなみに、九龍駅の駅前はすごくきれいでスラムがあるような雰囲気はありません。

しかし、建ち並ぶビルを見てみるとデザイン重視のものが多く、生活感が無いので“まだまだできたばかりの街”という雰囲気です。

九龍村に向けて江南の街を歩いていると、道路を挟んで対面側に突然スラム街の入り口が出てきます。

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九龍村を探索してみた

それでは、九龍村の中に入っていきましょう。

大きな通り沿いはゴミ処理の施設が並んでおり、集落はその奥のようです、場所によっては入り口すぐのところから集落が広がっています。

入り口から少し奥に入ると、バラックのような小屋があります。小屋の屋根はトタンのようなものできており、壁には布のようなものが巻かれています。なお、これら一つ一つに住所があるのか、壁にスプレーで番号(番地?)が書かれています。

多くの家にはトイレなどはついていないようで、歩いていると共同トイレを見かけます。ここにもスプレーで文字が書かれています。韓国語はわかりませんが“トイレ”を示しているのかもしれませんね。

九龍村もほかの地域のスラムと同様に、坂が多いです。もともと平地は、開発や生活がしやすいため、街としての整備が進みます。しかし、斜面は生活がしにくく、開発にもお金がかかってしまうため整備が進まず、そういった場所にスラムが発達します。

この九龍村も山の麓から山腹にかけて集落が形成されています。

坂を上っていくと集落が一望できます。遠くには江南の新興住宅街が広がっており、その風景のギャップにはとても違和感を覚えます。

山腹には森があり、その中にも集落が広がっています。ただ、木がある分、家は密集しておらず、家が建っていないスペースには大量のごみが捨ててあります。

また、山腹の空いたスペースには畑があり、ナスやキュウリ、ゴーヤ、ネギなどが育てられています。場所によってはきちんと広いスペースで畑作が行われており、農作業が生活の一部になっているのだと想像できますね。

なお、入り口付近では野菜を売っているお店があったので、もしかしたらここで採れた野菜を売っているのかもしれませんね。

九龍村に住む人々の生活は?

九龍村のなかの住宅は基本的に過密気味で、通路はすごく狭いです。人一人がやっと通れるような通路も多く、また、そんな中で電線が頭の高さにまで下がってきているので、やや危険を感じます。ちなみに、九龍村ではたまに火事が起こっているらしく、過去には通路が狭いせいで消火活動がうまくいかず、何名かの方が亡くなったりしたこともあるのだとか。

このようなスラム街の中にも教会がありました。教会には少し高い塔が建っており、その先端には十字架が掲げられているため、遠くからでもわかりやすいですね。割と集落が大きいため、3か所くらいで見かけました。

九龍村の人々の主なエネルギー源は“練炭”です。集落の中を歩いていると練炭の燃え殻がまとまって捨ててあります。この練炭は、支援団体らによって配給されることがあるのだとか。

※写真はトヨタ車です

一般的に“スラム街”というと、貧困のイメージが強いのですが、九龍村には路肩にjaguarをはじめとした高級車がたくさん停めてあります。これらは、決して捨てられていたものを再生したとかそういった雰囲気ではなく、本当にピカピカの高級車です。治安の悪いスラムであれば盗まれたり、破壊されたりするものですが、このような雰囲気は特にありませんでした。

ここがほかの地域のスラムと違うところで、僕自身、現地に行ってすごく違和感を覚えてしまいました。家の中から出てくる人も、決してボロボロの身なりをしているわけではなく、むしろパリッとしたスーツを着た人が多い印象です。

なぜこのようなスラム街が形成されたのか考えてみた

なぜ、こんなスラム街が形成されたのか、考えてみました。これはあくまで僕の仮説なので、あんまりあてにならないかもしれません。

まず、韓国の生活保護についてですが、調べてみるとどうやら日本よりも支給額は少なく、なおかつ支給の基準は厳しいそうです。

仮に、不動産や仕事を持つことで生活保護が支給されなくなるのだとすれば、不動産や仕事は持たないでしょう。とはいえ、支給額が日本よりも少ないということを考えたら支給金だけで生活していくのは厳しいのかもしれません。となればゴミ処理業やサルベージなど、半分ヤミ就労のようなかたちでお金を稼ぎ、それらは動産(車など)に換えて資産を持っておく。という方法が思いつきます(不動産購入や貯金をしてしまうと生活保護が打ち切られてしまうのではないか)。

それであれば、火事や立ち退きを強いられた時も“資産”に乗ってどこかへ行けばいいわけですし、ある意味、非常に効果的な方法にも思えますよね。

まぁ、これはあくまで僕の推測なのですが。

まとめ

外国に行くと、たまにスラム街に行くことはあるのですが、そこで見てきた風景と、今回見た風景があまりにも違いすぎて(高級車や住んでいる人の身なりなど)驚いたというのが第一印象です。

スラムと言えば“貧困”、“悪い治安”、“バラック”、“ホームレス”、“ボロボロの服装”そんなイメージがあったのですが、決して極度の貧困ではなく、治安も悪くないしホームレスもいない。今回、新しい形のスラムを見たような気がします。

↓九龍村に行ったとき動画をYouTubeにUPしていますので、こちらも是非。

コメント

  1. シンオンマ より:

     これは、私の憶測なので絶対とは言えませんが、高級車がある理由は、倒産し借金取りに追われているもと社長たちの持ち物だからでは。なので、いいスーツや取られたくない金目の物も積んで逃げてきたのでは。
     私がソウルで最初に住んだ貧乏長屋の韓屋(1件の家に4世帯住んでいた)では、向かいの部屋のおじさんが、やはり高級車を持っていて、いつも隠れるように暮らしていました。聞いたら、倒産して、借金取りに見つかるのを避けて、ここに逃げているのだと(ド田舎のアパートに高級家具を並べた家庭も行きました。夜逃げする時、家具だけ持って来たそうです。なので、食器棚に食器はほとんど無い。玄関が鳴ると、借金取りでないか確認してから開けてました。)。
     もちろん、そんな高級車が無い家は、本当にどん底の人たちでしょう。
     立ち退き要求に反対する横断幕もあったので、他に行くところが無い人たちでしょうね。
     あと、基本公立公園なので、住居も畑も、違法でしょうね。戦後のバラック集落のイメージでしょうか。土地の持ち主なんか、誰も気にしない無法地帯。
    漢江の南はあまり行ったことが無かったのですが(勝手に高級新興住宅街で自分とは縁が無いと思っていて)、今度ソウルに行ったら、ちょっと行ってみたいです。

    • silence2520206 より:

      こんにちは、コメントありがとうございます!
      また、返信が遅れてしまい、大変申し訳ありません。
      韓国にお住まいだったんですね、貴重なお話ありがとうございます。
      韓国では、”夜逃げ”というものがポピュラーな出来事なのでしょうか。
      九龍村を歩いていて、確かに夜逃げしやすそうな雰囲気だと思いました。
      あれだけの街ができてしまった以上、”今更立ち退き”というのは非常に難しそうですね。社会保障がしっかりとしていれば解消されるものなのか。。。
      思った以上にスラム化していて非常に驚きました。