危険物を取り扱うための資格、”危険物取扱者”には、いくつかの種類があります。先日、”危険物資格入門編”の丙種危険物取扱者と、”ポピュラーな資格”である乙種危険物取扱者について紹介しましたが、今回は”危険物資格の最上位”甲種危険物取扱者について、紹介していきたいと思います。
目次
甲種危険物取扱者とは?
甲種危険物取扱者は、消防法で定められたすべての危険物について、定数量以上の貯蔵や取り扱いおよび立ち会いすることができます。貯蔵や取り扱いは市町村等の許可を受けた施設で、政令の基準に則って行う必要があります。なお、指定数量は、危険物の種類ごとに、その危険性などを考慮して定められています。
危険物取扱者の種類
一言に”危険物取扱者”と言っても、いくつか種類があります。甲種危険物取扱者では、すべての危険物を取り扱うことができますが、その内容について以下に記載します。
種類 | 区分 | 取扱可能な危険物 | 具体例 |
甲種 | すべての危険物 | すべての危険物 | |
乙種 | 第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなど |
第2類 | 可燃性固体 | 硫黄、赤リン、マグネシウムなど | |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | ナトリウム、リチウム、黄リンなど | |
第4類 | 引火性液体 | ガソリン、灯油、軽油、エタノールなど | |
第5類 | 自己反応性物質 | ニトログリセリン、トリニトロトルエン、アジ化ナトリウムなど | |
第6類 | 酸化性液体 | 過酸化水素、硝酸など | |
丙種 | 第4類の危険物の一部 | 第4類に属する危険物のうちガソリン、灯油、軽油、第3石油類(重油、潤滑油及び引火点130度以上のものに限る)、第4石油類及び動植物油類 |
このように、危険物の種類は1~6類の6種あります。甲種危険物取扱者を取得することで、すべての危険物の取扱いと有資格者が作業に立ち会えば、無資格者も危険物の取扱いができます。
甲種危険物取扱者の取り方
ここからは、甲種危険物取扱者の取り方について説明していきます。
受験資格について
甲種危険物取扱者試験には受験資格があります。受験にあたっては、以下のいずれかに該当する必要があります。
対象者 | 大学等及び資格詳細 | 願書資格欄 記入略称 |
証明書類 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者 | 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校、高等学校の専攻科、中等教育学校の専攻科、防衛大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等 |
大学等卒 |
卒業証明書又は卒業証書(学科等の名称が明記されているもの) |
|||
大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者 | 大学、短期大学、高等専門学校(高等専門学校にあっては専門科目に限る)、大学院、専修学校 、大学、短期大学、高等専門学校の専攻科、防衛大学校、防衛医科大学校、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等 |
15単位 |
単位修得証明書又は成績証明書(修得単位が明記されているもの) |
|||
乙種危険物取扱者免状を有する者 | 乙種危険物取扱者免状の交付を受けた後、危険物製造所等における危険物取扱いの実務経験が2年以上の者 |
実務2年 |
乙種危険物取扱者免状及び乙種危険物取扱実務経験証明書 |
|||
次の4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者
|
4種類 |
乙種危険物取扱者免状 |
||||
修士・博士の学位を有する者 | 修士、博士の学位を授与された者で、化学に関する事項を専攻したもの(外国の同学位も含む。) |
学位 |
学位記等(専攻等の名称が明記されているもの) |
僕の場合は、『大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者』で受験資格を得ることができました。
試験について
甲種の試験は5択問題で(乙種も5択、丙種は4択)、試験時間は150分です。試験科目は以下の3科目です。
- 危険物に関する法令:15問⇒合格点9問
- 物理学及び化学:10問⇒合格点6問
- 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:20問⇒合格点12点
合格点は60%以上、ただしすべての科目で60%以上を取る必要があるのが注意点です。
甲種危険物は、乙種試験の1~6類分の内容が入っているせいか、乙種・丙種とは比べ物にならないほど試験範囲は広いです。ただし、試験問題の雰囲気は乙種・丙種と変わらず、ほぼ覚えて解くような問題が出題されます。計算問題は出題されたとしても簡単なものですので、がっつりとした『理系』でなくとも、しっかりとした勉強をすれば受かる資格であると思います。
因みに、甲種危険物の試験には科目や問題の一部免除はありません。
合格率はどのくらい?
危険物取扱者の合格率は以下の通りです。
年度 | 区分 | 甲種 | 乙種 | 丙種 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1類 | 2類 | 3類 | 4類 | 5類 | 6類 | ||||
30 | 申請者 | 1,611 | 767 | 569 | 773 | 14,604 | 697 | 812 | 871 |
受験者 | 1,311 | 732 | 542 | 737 | 12,515 | 669 | 791 | 805 | |
合格者 | 543 | 525 | 402 | 584 | 5,857 | 495 | 565 | 472 | |
合格率 | 41.4 | 71.7 | 74.2 | 79.2 | 46.8 | 74.0 | 71.4 | 58.6 | |
29 | 申請者 | 1,269 | 708 | 667 | 738 | 13,709 | 753 | 825 | 888 |
受験者 | 1,022 | 684 | 639 | 715 | 11,844 | 729 | 795 | 824 | |
合格者 | 354 | 458 | 480 | 491 | 5,095 | 536 | 535 | 458 | |
合格率 | 34.6 | 67.0 | 75.1 | 68.7 | 43.0 | 73.5 | 67.3 | 55.6 |
甲種危険物取扱者の合格率は30~40%前後です。一見すると乙種4類の合格率と大差ないようにも見えますが、乙4は受験資格がないのに対し、甲種は化学を専攻もしくは既に乙種危険物を数種取得した人しか受けることができないため、レベルは全然違います。
受験費用は?
種 | 受験料 |
---|---|
甲種 | 6,500円 |
乙種 | 4,500円 |
丙種 | 3,600円 |
甲種種試験の受験料は6,500円です。乙種を1~6種すべて取得しても同じように危険物を取り扱うことができますが、甲種の受験料が6,500円なのに対し、乙種すべての受験料は27,000円ですので、できれば甲種を一発で取得するのがいいでしょう。
勉強方法は?
甲種危険物の勉強方法は、問題集をひたすら解くことでしょう。問題を繰り返し解くことで、自分の苦手な科目を見つけ、そこを重点的に押さえておくようにします。僕は、『物理学及び化学』の科目が苦手だったので、結局勉強時間のほとんどをこの科目に費やしました。
また、僕自身、高校時代から化学は赤点ばかり、その後理系の大学に行き”化学”の講義を履修していたものの、テストはいつも過去問を一夜漬け。そのせいか、本当にイチから勉強をしなくてはなりませんでした。そんな化学ド素人の僕が思ったのは、自分に合った教材を見つけることがいかに大事だったか。ということです。はじめ、何冊かの参考書を買いましたが、全く内容が理解できず・・・。結局、そのあと書店で丸一日を要して自分に合った参考書を見つけました。もし、化学が苦手な人がいれば自分に合った参考書を手に入れることも重要だと思います。
因みに僕が使った参考書と問題集は以下のものです↓
僕は、この参考書を活用しながら毎朝1時間の勉強を二カ月続け、試験に合格することができました。
試験の難易度について
甲種危険物取扱者の難易度ですが、試験範囲が広い分、乙種・丙種と比較すると難しいです。ただし、ひたすら記憶すれば解ける問題が多いため、一般的な難関資格と比較するとまだ受かりやすい資格であると思います。
・難易度(0~10段階で10が高い):6
まとめ
甲種危険物取扱者は受験資格があるため、皆が手軽に受験できる資格ではありませんが、逆に受験資格を手に入れたのであれば、すでに入口には立つことができているので、自身の専門性を伸ばすという意味でも取得することが望ましい資格であると思っています。
また、理系の資格でありながら、記憶力で勝負する試験であるため、文系の人でも合格することのできる試験だと思います。
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